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・まず、本堂を建てるのはどういう事なのか? から聞きに行きました
・とにかくいろんなお寺を、実際に見てまわりました
・業者の最終決定はコンペ形式で…全会一致に感激
・いよいよ工事開始…本堂改築という大きなご縁
・引渡しを受けて…本堂に対する意識、思い、姿勢が変わりました
・職人さんとの出会い…建築といっても、大事なのは、やはり、「人」
・これから計画されるお施主様へ…建築の勉強はやはり必要
西教寺本堂改築工事
長崎県大村市
平成18年9月竣工
真宗大谷派

いつもお世話になっている西教寺様ですが、こういう形でお話を伺う事で、改めて気付かせて頂く事も多く、勉強させて頂き、貴重な時間となりました。
また、インタビュー終了後にもたくさんの有難いお話を頂き、ついつい長居をしてしまいました…ありがとうございました。
西教寺様はこの秋、落慶法要と継職法要という大きな節目を控えていらっしゃいます。
新本堂という道場での、西教寺様とご門徒の皆様の益々のご発展を、心よりお祈りしております。
(インタビュー日 ’07.08.23.)
西教寺様は、大村湾に面する長崎県大村市の、緑豊かな場所に位置します。
インタビュー当日、お寺に到着すると、ちょうど、夏休みで住職のお孫さん達が本堂の雑巾がけをされているところでした。新本堂が大切にされているのを感じ、ありがたく、嬉しくなりました。
子供達の声が響き、心地よい山からの風が渡る中、若院様にお話を伺いました。
―――本日は、落慶法要・継職法要のご準備にお忙しいなか、お時間を頂き、ありがとうございます。早速ですが、旧本堂が建てられたのは?
まず、雨漏りがひどかったですね。これは後に大浦社寺さんに調査してもらって分かったのですが、そのせいで、小屋裏の材料が腐ってきていました。また、前の前の本堂の古材を使っていたので、各部材が小さく、不安定に感じていました。白蟻の被害もありました。
これらの事があり、改築なり修築なり、ということを漠然と考え出したのが、10年程前です。
当時の総代長さんと2人で、とりあえず太宰府の大浦社寺建築社を訪ねました。まだ雲をつかむ様な話で、門徒さんにも全く話が浸透していない時です。もちろん初めてですし、まず本堂を建てるというのはどういう事なのか?という事から聞きに行きました。
大浦社寺建築社については、お名前は以前から知っていましたし、工事を経験された先輩住職達からも、社寺古建築の専門業者ということで話は聞いていましたので。
またそのころから、総代さんが常任の建設委員になられて、一緒に、改築されたところと修築されたところ、いろんなお寺を回りました。そうして改築・修築双方のいろんなお話を聞いているうちに、総代さん達の間で、やはり今の代で、頑張って改築をやっておかなければいけないのでは、という意見にだんだんとなっていきました。
業者を決定する時は更に大変でしたが、その時も、まず4つの業者を候補に選び、いろいろな工法があるでしょうから、長崎県内とか、近場とか、見て回りました。そうやって、いろいろなタイプを見て回ったのが、結果的に良かったと思います。聞いた事だけで無く、実際の建築を見て、肌身で感じる、それから考えて、決定していく、と。全部で40~50件は見に行ったでしょうか。大浦社寺建築社のもの以外にも、本当に沢山、見に行きました。
ただやはり、核になる人、例えば住職や総代長さんとかは、本当に建築の勉強をしないとだめでしょうね。建築の事を知らないで見に行っても、結局は、高いものは避け、安い方に傾いていってしまいます。これでは、意味がありません。
あと、どこをポイントとして見たかですが、私が先輩住職に教わったのは、見えていないところを見る、という事です。例えば、床下の脚固構法と土台構法の違いとか、屋根裏の小屋組の組み方とか、軒とか、そういうところを、単なる飾りだけにしていないか。これらを一つ一つ押さえながら、皆で見て回りました。そうしたら、違いがよく分かりました。
やはり、いくら多くを見て回ったとはいえ、住職や総代さん等の、一部の決断だけでは、どうしても批判が出るでしょう。どんな決断、どんな理由であれ、多額の浄財を出す事ですから、当然です。対して、コンペ形式だと、衆目の、ガラス張りの中で決められます。
そして、コンペにおいて門徒さん達に説明をする時も、建築の勉強や、実際に見て回った事は、大変役に立ちました。
それから、工程表を作ってもらったり、プレゼンテーションをしてもらったりする中で、建った物だけではなく、それぞれの会社の人達とか、社内の雰囲気とか、を比べることも出来ました。これも良かった点ですね。
そうして、もちろんいろいろな考え方はありましたが、最後には、総代会の全会一致で、大浦社寺建築社に頼もう、正統な古建築にしよう、ということに決まりました。この時は本当に嬉しくて、感激で涙が出ました。
そこまで、先輩方はじめ、皆様が導いてくださったのだと思いますね。
あと、感じたのが、大浦社寺建築社のネットワークです。単なる宮大工としてだけでなく、瓦、左官、建具、板金。ネットワークの素晴らしさ、職人さん達の素晴らしさが、嬉しかったですね。これはもう、私が推奨します。
ただしかし、現代のお寺離れとか宗教離れとかいろいろ言われてはいますが、実際ふたを開けてみると、意外と皆様関心をお持ちになって、心を開いて、ご懇念をして下さったのは、驚きでした。ご門徒さん達の力を改めて感じましたね。
そして、私達住職は、建築にしても仏教にしても、しっかり勉強しないといけないなあ、と感じました。
現場入り後、大村のケーブルテレビからもずっと取材を受けていましたし、大村市民の皆様にも、西教寺の本堂が建っている、という話が伝わり、見に来て下さる方も増えてきて、嬉しかったのですが、正式に披露する、というのは、上棟式が初めてですよね。
本当に大勢の方に来て頂き、餅撒きでも、門徒さんがご年配の方から小さなお子さん達まで、境内にぎっしりで、嬉しそうにしていらしたのには感激でした。ああ、これは単なる私だけの喜びではなく、皆の喜びになったんだなあ、と。それはそれは嬉しかったですね。
また、ここまでの間に、これほどの大きな計画ですから、いろいろと大変なこともありましたが、それらを経て、門徒さんとの絆はより一層、濃く、強くなっていました。本当に、ひとつの大きなご縁ですよね。この、本堂改築というご縁が、100年から200年に一度くらいは、お寺には必要なんじゃないかと思います。
私自身は、実は、七間では無く六間本堂にした事で、ちょっと狭いかな?という心配が、正直あったんです。ですが実際は、外陣に柱が無い分、人数も結構入ったし、何よりある住職が、とても良い事を言ってくれたんです。仏教のことばで「随所に主となる」というものがありますが、これを「随所に従となる」と。つまり、仏教の世界でも、普段の生活でも言える事ですが、本当に大切なものだと分かったら、それに従うことが出来ますね。我が一番、と思っていたら、どこに行っても衝突しかない。心から喜んで従う、という生き方があるんだ、と言ってくれて。確かにそうですよね。そして今、職人さんたちの一生懸命さや、流してくれた汗、門徒さんの喜びの結晶として、心から大事に思っています。
やはり大事なのは、人、ですよね。宮大工さんも人だし、職人さん達も人だし…建築といっても、やはり、人、なんだなあ、と強く感じました。
そうそう、菊間瓦の製作現場に見学に連れて行ってもらって、瓦を焼いているところを見ることが出来たのも良かったですね。
そしてこれは瓦に限らずですが、職人さん達の思いとか、過程を見ることが出来た、というのが大きいです。例えば、極端に言うと、工事の契約さえしてしまえば、あとは何も見なくても、おまかせでも本堂は建ちますよね。しかし、ずっと密に職人さん達とコミュニケーションをとることによって、瓦一枚が、部材のひとつが、という話まで聞いて、感じることが出来る。やはり、職人さん達との出会いは大きかったですね。
あと、社長さんの人柄ですね、融通利かないけど真っ直ぐと言うか(笑)。商売っ気が無い姿、良いと思います(笑)。
今の時代、住職に求められるものもそうですが、優しいとか、人当たりが良いとか、分かり易いとか、そういう事ばかり言われます。それらももちろん大切ですが、あまりそればかりに囚われると、本当に大切なものが分からなくなってしまうのではないでしょうか。だから、本当に大切なものについては、譲れない一線があって、頑固であっていいと思うんですよね。
そういったことも、私もこれから住職になりますが、勉強していこうと思います。
業者は、もちろんそれぞれの考え方がありますから、その立場から話をします。ですから、1社の言う事だけを鵜呑みにするのではなく、まず、社寺の古建築の事を勉強して、それから皆さんで決めていかれると良いと思います。